契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 人目は気になるが、力強く手を引いてくれる彼にトキメキが止まらなかった。
 強いて言えば、汗ばむ掌が気になる程度。
 しかしそれとて、『どうでもいい』と思えてしまうくらい東雲のことで頭の中が満たされた。

「君は僕の妻なんだから、傍にいてくれないと困る。それとも迷子になって僕に探してほしいの? それはそれで可愛いけど、せっかく一緒に過ごせる時間を無駄にしたくないよ」

 耳元で囁かれた言葉に、体内が熱くなる。
 頬も熱を持って、希実は赤面せずにいられなかった。

「お、大人なので迷子にはなりません……っ」
「そう? じゃあまさか僕から逃げようとしていた? だったら尚更手を繋いで捕まえておかないとだね。悪いけどもう一生逃がしてなんてあげないよ」

 甘くて意地悪な脅し文句に、希実の不安が溶けて薄まる。
 ついさっきまで周囲の人間からの視線が苦痛で、居心地の悪さに挫けてしまいそうだったのに、今は自然に微笑むことができていた。

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