契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「……どこにもいきませんよ」

 ぎこちなく彼の手を握り返す。
 すると東雲は艶やかな笑みで希実の首筋に鼻先を埋めてきた。

「ふふ。こういう初々しいデート、新鮮で楽しいな。もっとも、希実と一緒に過ごせるなら何でも最高に決まっているけど」

 首筋に唇を触れさせたまま話されて、擽ったい。
 ついピクリと希実が首を竦めれば、彼は更に大胆にこちらの肌へ吸い付いた。

「東雲さん……!」
「外出せずに二人で家に籠っているのも好きだ。でもそれだと、ついベッドから出たくなくなるから厄介だな」
「……!」

 際どい台詞は幸いにも、こちらにだけ聞こえる声量だった。
 それでも希実本人の耳にはバッチリ届いている。
 こんな昼日中の人が多い場所でする会話ではなく、希実は慌てふためいて彼から離れようとした。
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