契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「あんまりみすぼらしいから憐れんで構われているだけなのに、もしかして愛されていると思っているの? 物乞いのくせに。ブスは身の程を弁えなさいよ」

 せせら笑う声は辛辣だ。希実を甚振ることに躊躇いは一切ない。
 むしろこちらが顔を強張らせたことで勢いづいたのか、花蓮は余裕を滲ませた。

「あんた程度、多少色気づいてもたかが知れているのよ。せめて自分で気づいて東雲さんから離れないと惨めじゃない? 私が散々助言してあげたのに、本当頭が悪いのね。彼に恥をかかせている自覚もないの?」

 肩の辺りを正面から突き飛ばされ、避ける間もなく希実は壁際に追い詰められた。
 いや、避けられなかったと言った方が正確か。
 ひどい馬頭に唖然としたことで、反応が遅れてしまった。

「……し、東雲さんは私を大事にしてくれています……っ」

 絞り出した声は震えている。
 それでも勇気を掻き集めて花蓮から視線を逸らすまいとした。

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