契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「飯尾さんが何と言おうと、私たちは正式に認められた夫婦です。私に構っている暇があるなら、他にもっとすることがあるのではないですか? 少なくとも仕事をサボっている場合ではありませんよ」
「失礼なこと言わないでよ!」

 か細くても、最後まで言い切れたことに希実自身が驚いた。
 昔なら、きっと一言も反論できず、涙を堪えるのが精一杯だっただろう。
 亀の歩みでも成長している。そう実感できたことが、希実により力を与えてくれた。

「私たち夫婦のことに、他人が口出ししないでください」

 毅然として告げれば、如実に花蓮の顔色が変わった。浮かべていた悪辣な笑みは消え去り、わなわなと震えだす。
 今にも掴みかかられそうな気配に希実が警戒していると、彼女が殊更意地悪く口角を引き攣らせた。

「……調子に乗っているみたいだから、いい加減目を覚まさせてあげるわ。感謝してよね」

 言うなり、花蓮が何かを取り出した。
 てっきり叩かれると思い身構えれば、眼前に突き付けられたのは一枚の写真。
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