契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 想定外のことに希実が戸惑っていると、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべた。

「よく見なさいよ」

 近頃めっきり紙の写真を見かける機会がないため、狼狽する。
 しかも花蓮の意図が分からない。
 希実は惑いつつも、長方形の紙片に焦点を合わせた。
 映っているのは、十代前半から半ばの少女だ。
 体格は華奢で眼が大きいのが印象的な、整った容姿。幼さをのこしつつも、既に完成された美しさを誇っていた。
 おめかしし、手にはヴァイオリンを持っている。
 何かの発表会かコンクールなのか、育ちの良さが一枚の写真からでも伝わってきた。

「あの……?」

 見覚えはない。
 知らぬ少女をこうして見せられても、どう反応すればいいのか分からず困る。
 だがその隣に立つ少年に関しては、どこか記憶を刺激された。
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