契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 こちらも少女に負けず劣らず端麗な容姿を持ち、如何にも賢そうな瞳をしている。まだ線の細さはあっても、いずれ相当な美丈夫に成長するのが確実と思われた。
 何よりも希実の目を惹くのは、彼の強い意志を宿した眼差し。
 柔和に微笑みながらも、双眸の奥には揺らがない自我と自尊心が宿っていた。
 自分はどこかでこの眼を見たことがある気がする。
 それもとても近く、見つめ合う距離で。

 ――この人は……

 希実が視線で問うと、花蓮は小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「ふん、やっぱり知らないのね」
「何の話ですか? この子たちはいったい……」
「東雲さんからは聞いていないってことよね」

 勿体つけられても時間の無駄だ。希実がもっとよく写真を見ようとすると、彼女はわざとらしく上へ掲げた。

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