契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「これでハッキリしたわね。やっぱり貴女は丁度いい駒程度の人間なんだわ」
「え?」
「――彼女は東雲さんの婚約者よ。元、ね。本当に全く知らなかったの?」

 人間は、驚き過ぎると声が出なくなることがあるらしい。
 希実は愕然とし、瞠目する以外できなくなった。

「ふぅん。東雲さんだけでなく、おじ様たちも貴女には言う必要もないって判断したのね。ま、そうよね。こんな結婚、茶番でしょ? 一時的な遊びみたいなものだもの。部外者に詳しいことを告げる理由なんてないわ」
「ま、待って……いったいどういうことですか……?」

 正直なところ、東雲に過去婚約者がいても不思議はないかもしれない。
 当然愉快ではないものの、一般家庭とは違う家柄に生まれ育った彼ならば、決められた婚姻相手がいても頷ける。
 だが問題は、写真の少女が『元婚約者』だという点。
 それから何故花蓮がここまで希実に対して『この話が攻撃材料になる』と確信しているかだった。

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