契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 言いながら花蓮が今度は携帯電話を取り出す。
 手早く操作し、一枚の画像を表示させた。

「さっきの写真は十五年ちょっと前のもの。これが現在の姿よ」

 映し出された女性は、息を呑むほど美しかった。
 すらりとした体躯に、青のドレスがよく似合う。華やかに結い上げられた髪が彼女の美貌をより引き立てていた。
 嫣然と微笑む姿には、自信が漲っている。
 少女だった頃の儚さはそのままに、大人としての妖艶さも兼ね備え、十人いれば十人が『美女だ』と認めるに違いない。
 そして手にしているのは、如何にも宝物と言った風情の使い込まれたヴァイオリンだった。
 一瞬――希実の脳裏に現在の東雲とこの女性が並び立つ姿が思い浮かぶ。
 それは悔しいけれど、心底お似合いだと感じた。
 美男美女。堂々とした佇まい。
 きっと誰にも文句をつけようがない。
 完璧な二人として、称賛だけが集まるに決まっていた。

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