契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「これで分かった? 東雲さんが貴女程度の女を本気で選ぶはずがないでしょ? この人が戻ってくるまでの暇潰しよ。本物の婚約者が戻ってくれば、貴女なんてお払い箱に決まっているわ。……東雲さん、西泉さんと連絡を取っているわよ?」
眼に見えない場所へ突き立てられた刃物が、心臓を切り裂いた。
鮮血が、とめどなく流れる。
血の気が引いてゆき、希実の膝が笑う。
だが渾身の強がりで冷静さを装った。
「……ご忠告、どうもありがとうございます。でも、もう結構です。どちらにしても、飯尾さんには無関係のことですから」
それだけ言い捨てて、花蓮の横を通り過ぎた。
一目散に扉へ向かい、倉庫を出る。
背後で「追い出される前に自分で出ていった方が身のためじゃない?」という声が投げつけられたが、希実が振り返ることはなかった。
とにかくこの場を離れたい。
行く当てはなくても、同じ場所に留まっている方が苦痛だった。
やみくもに歩いて、辿り着いたのは女子トイレ。
眼に見えない場所へ突き立てられた刃物が、心臓を切り裂いた。
鮮血が、とめどなく流れる。
血の気が引いてゆき、希実の膝が笑う。
だが渾身の強がりで冷静さを装った。
「……ご忠告、どうもありがとうございます。でも、もう結構です。どちらにしても、飯尾さんには無関係のことですから」
それだけ言い捨てて、花蓮の横を通り過ぎた。
一目散に扉へ向かい、倉庫を出る。
背後で「追い出される前に自分で出ていった方が身のためじゃない?」という声が投げつけられたが、希実が振り返ることはなかった。
とにかくこの場を離れたい。
行く当てはなくても、同じ場所に留まっている方が苦痛だった。
やみくもに歩いて、辿り着いたのは女子トイレ。