契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
個室に入って鍵をかけるなり、希実の双眸から涙が溢れた。
「……っ、ふ」
職場で泣くものかと堪えても、涙が止まる気配はない。
それどころか眼が溶けてしまいそうなほど、次から次へ流れ落ちた。
息を吸う暇もなく、嗚咽が込み上げる。
適切なことを言い返せなかった自分が情けなく、悔しい。
もっと言えば、花蓮の言葉に頷いてしまっている希実自身が許せなかった。
――勝ち目がないって、思ってしまった……
由緒正しいお家柄のお嬢様で、ヴァイオリニストとして活躍できる才能があり、更には秀でた容姿。
背筋を伸ばした姿は、内面からの自信に裏打ちされている。
音楽家として成功するには、それだけ努力し、自らの手で栄光を勝ち取ってきたということ。
希実が持っていない要素を、全て手にしている人だ。
そんな完璧な女性がかつて東雲の婚約者だったのか。
「……っ、ふ」
職場で泣くものかと堪えても、涙が止まる気配はない。
それどころか眼が溶けてしまいそうなほど、次から次へ流れ落ちた。
息を吸う暇もなく、嗚咽が込み上げる。
適切なことを言い返せなかった自分が情けなく、悔しい。
もっと言えば、花蓮の言葉に頷いてしまっている希実自身が許せなかった。
――勝ち目がないって、思ってしまった……
由緒正しいお家柄のお嬢様で、ヴァイオリニストとして活躍できる才能があり、更には秀でた容姿。
背筋を伸ばした姿は、内面からの自信に裏打ちされている。
音楽家として成功するには、それだけ努力し、自らの手で栄光を勝ち取ってきたということ。
希実が持っていない要素を、全て手にしている人だ。
そんな完璧な女性がかつて東雲の婚約者だったのか。