契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 仮にそれがかなり昔の話であっても、夢を追うために努力を重ね有言実行で叶えた眩しい人が戻ってくれば、心が揺らがないはずがない。
 魅力的な人間が眼の前に現れれば、心惹かれずにいられるものか。

 ――嫌いで別れたわけでもないのに?

 二人が並んだ写真は、澄まし顔をしつつも仲の睦まじさが見て取れた。おそらく、親が決めた婚約であっても、二人は良好な関係だったと思う。
 何事もなければ、慈しみと愛情を深めていったに決まっている。
 両家としても、似合いの二人が結婚するのを当たり前の未来として待っていた。
 ならば答えは初めから分かっている。
 いくら否定しようとしても、希実の中で解答は出ていた。

 ――そうか……だから私に契約結婚を申し込んだんだ……

 一度はその縁が途切れたとして、事情が変われば再び結び直したいと考えるのが当然。
 それまでの時間稼ぎをするのに丁度いい人材が眼の前に転がっていたら、利用するのは自然な流れ。
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