契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「あ、それともシャワーでも浴びているかな? しかも一人とは限らないよねぇ。東雲さんってスル前と後どっちに入るタイプ?」
「……っ、いい加減にして」

 希実が無反応を貫いていることに痺れを切らしのか、彼女はかなり際どい発言をぶつけてきた。
 それまでは抗議したとしても『貴女の被害妄想』と言い逃れできるレベルだったが、これは違う。
 真正面から希実を侮辱し、笑い者にするため以外何物でもなかった。

「えぇ? 何のことぉ?」
「今更とぼけないでください。何故私に絡むんですか? いくら私に嫌がらせしても、東雲さんが飯尾さんのものになることはありませんよ」

 怒りと屈辱感で声が尖る。自分でも信じられないほど、怒りの籠った声音が漏れた。

「は? 何それ」

 柳眉を逆立てた花蓮が仮初の笑顔をかなぐり捨てる。
 その時、タイミングを計ったようにエレベーターが地上階へ到着した。
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