契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 どちらにしてもひどく後ろ向きで非生産的だ。
 結局誰も幸せにはならない。
 皆が苦渋を味わうだけの、不幸のごみ溜めのようだと思った。

「……付き合いきれません」

 本当は希実だって泣き喚いてしまいたい。
 感情手的に彼女へ当たり散らせれば、少しは気が楽になるだろう。
 けれどそれをしてしまうと、確実に後で後悔する。

 ――それに――私はまだ東雲さんに真実を確かめていない。欠片ほどの希望だとしても、私は彼を信じたいんだ。

 愚かだと思う。
 如何にもチョロい女だ。
 こんなだから、利用されたり馬鹿にされたりするのかもしれない。
 だがだとしても、それが希実のプライドでもあった。

< 251 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop