契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「……戸惑っていますか?」
「……ぁ、当たり前です……っ、こ、こんな……!」

 途轍もなく恥ずかしい。だが目を逸らすことも難しかった。
 完全に搦め捕られている。
 真っ赤になった顔も全身も発火しそうだ。全身は汗まみれ。
 動悸は過去最高速度を更新していた。

 ――体内から爆発してしまいそう……!

「ふぅん。便乗して媚びることもないんですね。――面白い。それに……やっぱり可愛いな」

 先ほどよりも感慨深く言われて、一層希実の困惑が高まった。
 冗談にしても、経験が皆無に等しい女に対して勘弁してほしい。本気にはしないものの、冷静ではいられなくなる。
 混乱し、思考が機能停止してしまう。
 膝が震えて逃げ出すこともできない希実は、潤んだ双眸で東雲を見上げるのみだ。
 今や二人の視線は、至近距離で濃密に絡まっていた。

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