契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――こんなに近くで見ても、顔が綺麗すぎて作り物みたい。一つも欠点が見つからない完璧な美貌……肌のきめ細かさ、尋常じゃない。何だか恐れ多いわ……

 現実逃避を兼ねた畏怖を覚え、希実はもはや作り笑いも浮かべられなくなった。

「うん、考えれば考えるほど、佐藤さんが適任です。今日ここで僕らが巡り合ったのは運命ですね」
「何の話ですか?」

 辛うじてあった互いの間の空間が、より縮んだ。
 言わずもがな、東雲が希実に一歩近づいたからだ。
 反射的に後退った希実の背中は、あっけなく壁にぶつかった。

 ――え……? いつの間に壁際に追いやられていたの……?

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