契約結婚、またの名を執愛～身も心も愛し尽くされました～

「ええ。大変なんです。相手は誰でもいいわけではありません。今すぐ真剣交際できる女性を見つけるのは不可能です。偽の恋人役を演じてもらうにしても、その方が約束を守るとは断言できませんし。実際、これまでにも割り切ったお付き合いから過分な要求をするようになる方がいたんですよ」

　さらりと漏らされた話に、希実の頬が引き攣った。
　要約すると、『遊び相手が本気になり、結婚を迫った』ということか。

　――控えめに言って、最低では……いやでも、初めからそういう約束で関係を持ったなら、ある意味誠実なの……？　勝手に条件を変えようとした女性の方が悪い？

　交際経験も恋愛経験もない希実には、まるで理解できない世界だ。
　いっそ『異世界の話かな？』と思った方がしっくりくる。

　――私の常識にはないから、考えてもよく分からない。でも、世の中色々あるものね……知らないだけで私には想像もできない世界があるに違いないわ。