契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 理解は無理だと見切りをつけ、希実は強引に呑み込んだ。
 どうせ自分に直接関りがない話だと判断したせいもある。
 それが大いなる過ちだと気づいたのは、次の瞬間だった。

「佐藤さんならば、僕の理想です。対価は支払いますから、僕と契約結婚しませんか?」
「はい……?」

 耳は聞こえている。
 しかしどうしても意味が汲み取れなかった。ただ東雲の声がリフレインしている。
 否、希実の脳が全力拒否をしていた。

「す、すみません。ちょっとぼうっとしていて聞き逃しました。もう一度おっしゃっていただけますか?」
「いいですよ。僕は飯尾さんからの好意を諦めさせるため、佐藤さんは彼女に今日のことが露見しないよう、共同戦線を張ろうと提案しました。つまり、結婚しましょう」
「ぇ……?」

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