契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 予想と当たらずとも遠からずな発言をされ、全身が重くなった心地がしたのは、錯覚だけではあるまい。
 希実は不用意に言い返して倍の攻撃を受けることを恐れ、無言で母の言葉の続きを促した。
 娘の反応を良くも悪くも気にかけない母は、数秒の沈黙などものともしない。すぐに『そんなことより』と話題が変わった。

『愛実が妊娠したのよ。もうすぐおばあちゃんになれると思うと、私嬉しくって!』

 弾む声音は、母の歓喜を如実に表していた。
 言わずにはいられないといった風情で、華やいでいる。
 希実は虚を突かれつつも、電話を持ち直して大きく息を吸った。

「それはおめでとう。予定日はいつ?」
『十月よ。今から楽しみだわ』

 愛実は希実のすぐ下の妹で、半年前に結婚したばかりだ。
 何はともあれ、おめでたい話題に希実の頬が緩む。

「贈り物は何がいいかな? お母さんは何を贈るの? 愛実に直接聞いた方がいい?」

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