契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 プレゼントが被っては大変なので、その辺りは妹本人と打ち合わせた方が正解かもしれない。そんなことを考えながら希実が歩き始めた時。

『それも考えなくちゃならないけど、あんたも真剣に自分の身の振り方を考えなさいよ。妹に結婚だけでなく出産まで先を越されて、恥ずかしいと思わないの?』

 おめでたい報告で上向きになった気持ちが、再び盛り下がる。
 どうやら妹の懐妊よりも、母が電話してきた一番の目的はこちらだったらしい。

「……前にも言ったけど、こっちでは私の年齢で一人なのは全然珍しくない話だよ」

 勿論、恥ずかしくもない。極一般的で普通のことだ。
 何なら一生シングルライフを選ぶのも、個人の自由であり権利だった。
 今の時代、『結婚=ゴール』という考え方の方が視野が狭い。
 だが、母にそれを理解してもらうのは困難であるのも、希実は痛感していた。
 それに自分だって『一生一人で生きていく』という確固たる覚悟は正直ないのだ。それが、強気に胸を張れない一因でもあった。

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