契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 死刑宣告にも似た断言に、希実の眼の前は真っ暗になった。母が何か言っていたが、実際充電は残り五パーセント。
 丸ごと嘘ではないと言い訳し、通話は切らせてもらった。
 母にも悪意はないはずなのに、何故こうまで意思疎通が難しいのか。
 徒労感と無力感で、いっそその場に座り込みたくなる。

 ――次の帰郷までに恋人……? 無理に決まっているじゃない!

 我ながら悔しい。
 アグレッシブな性格なら、期日までに恋人をゲットできるのかもしれない。もしくは、男友達に偽装を頼み込むか。
 だがどちらも希実には無理だ。
 たった数か月で交際相手を見つけられるはずはなく、異性の友人なんぞ一人もいなかった。
 つまり、手詰まり。
 最終手段として人材派遣サービスを利用することも模索したが、交際経験すらない自分が親族の前で上手く嘘を吐ける自信はなかった。
 きっとアッサリ鍍金が剥がれる。
 そうなれば、本家の息子との結婚は確実に避けられなかった。

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