契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
――だいたい一時しのぎをしても、その後はどうするのよ。人材派遣じゃ流石に結婚相手までは……
「――佐藤さん、遅くなって済みません。ずいぶん待たせてしまいましたね」
壁に寄り掛かって虚脱していた希実の進行方向が、突然塞がれた。
新たに壁が出現したのかと思ったくらいだ。
すぐ間近にある上質なネクタイを辿り視線を上げれば、そこには眼が潰れそうに眩しい笑みを湛えた美貌の男が立っていた。
「あ、安斎さん……」
「待たせ過ぎたから、怒って先に帰ってしまったかと心配していました」
今まさに、帰ろうとしていた途中である。
しかしそう告げる間もなく、希実は東雲にエスコートされて歩き出した。
すっかり母との電話で精神的打撃を受け、考えるのが億劫になっていたのが敗因。促されるまま気づけば駐車場に停められた車の助手席に座っていた。
「……ぇ?」
「――佐藤さん、遅くなって済みません。ずいぶん待たせてしまいましたね」
壁に寄り掛かって虚脱していた希実の進行方向が、突然塞がれた。
新たに壁が出現したのかと思ったくらいだ。
すぐ間近にある上質なネクタイを辿り視線を上げれば、そこには眼が潰れそうに眩しい笑みを湛えた美貌の男が立っていた。
「あ、安斎さん……」
「待たせ過ぎたから、怒って先に帰ってしまったかと心配していました」
今まさに、帰ろうとしていた途中である。
しかしそう告げる間もなく、希実は東雲にエスコートされて歩き出した。
すっかり母との電話で精神的打撃を受け、考えるのが億劫になっていたのが敗因。促されるまま気づけば駐車場に停められた車の助手席に座っていた。
「……ぇ?」