契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
世の中には、どんなに困っていてもやっていいことと悪いことがある。そして今希実の頭に瞬くのは、明らかに後者だった。
脳内に天使の格好をした自分と悪魔の姿をした自分飛び回る。
羽を生やした白と黒の希実は、交互に喋り始めた。
『誇りを擲っては駄目よ、希実。人として道を踏み外したら、もう戻れないわ』
『誰にも迷惑をかけず、不幸にならないのに、どうして悩む必要があるの? しかも向こうから提案してくれたんだよ? こっちから頼み込まずに済むなんて、話が早いじゃない』
『偽装結婚なんて、犯罪同然でしょ! これまで清く正しく生きてきた自分を、否定してどうするの』
『犯罪だなんて大げさ。これはただの契約。だから報酬だって堂々と受け取ればいいのよ』
頭の中で響く言葉は、どちらも説得力があった。
それでも倫理観と理性に則れば、希実が選ぶべきは天使の理論だ。
しかし悪魔の声に耳を傾けている時点で、迷う心があるのは隠し切れなかった。
『自分が助かるのは勿論、人助けにもなるんだよ? 何が問題なの?』
脳内に天使の格好をした自分と悪魔の姿をした自分飛び回る。
羽を生やした白と黒の希実は、交互に喋り始めた。
『誇りを擲っては駄目よ、希実。人として道を踏み外したら、もう戻れないわ』
『誰にも迷惑をかけず、不幸にならないのに、どうして悩む必要があるの? しかも向こうから提案してくれたんだよ? こっちから頼み込まずに済むなんて、話が早いじゃない』
『偽装結婚なんて、犯罪同然でしょ! これまで清く正しく生きてきた自分を、否定してどうするの』
『犯罪だなんて大げさ。これはただの契約。だから報酬だって堂々と受け取ればいいのよ』
頭の中で響く言葉は、どちらも説得力があった。
それでも倫理観と理性に則れば、希実が選ぶべきは天使の理論だ。
しかし悪魔の声に耳を傾けている時点で、迷う心があるのは隠し切れなかった。
『自分が助かるのは勿論、人助けにもなるんだよ? 何が問題なの?』