契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 戸惑って動けない。硬直した希実を嘲笑うことなく、彼は穏やかに「レストランの個室を予約してあります」と微笑んだ。

「レストラン……ですか?」
「はい。約束通り部屋に連れ込む真似はしませんので、ご安心を」
「そ、そんな心配はしていません」

 頬が熱を持っているのが分かる。途轍もなく赤らんでいるに違いない。
 それがまた恥ずかしくて、希実は両頬を掌で押さえ、俯いた。

「か……揶揄わないでください……」

 いちいち反応してしまう。そんな自分がもどかしい。
 東雲と交わした会話は乏しいのに、ことある毎に経験値の低さを自覚させられた。

「すみません。あまりにも初々しくて可愛いので、つい」
「私相手に、リップサービスはいりませんよ」
「本心なんですけどね」

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