契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 尊敬するほど自己肯定感が高い。希実は持ちえない強さだ。そこに仄かな憧れを抱かずにはいられなかった。

 ――少し間違えれば傲慢なのに、素敵に見えるところがすごい。根拠のない自信ではなく、裏打ちされた実績があるからだよね。

 眩しい思いで双眸を細める。
 希実の頬は、自然と綻んでいた。

「やっと笑ってくれましたね」
「え」
「昼間の倉庫からずっと、喰われる寸前の小動物のように怯えていたので、ホッとしました。もしや僕が佐藤さんを襲う肉食獣に見えているのかと……」
「ち、違います!」

 自分がオドオドビクビクした小動物っぽいのは否定しないが、東雲を獰猛な獣だと見做したことはない。

 ――誰にも飼い馴らせない孤高の獣めいたところはあると思うけど……

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