契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「――契約成立、ということでいいですか?」
「は、はい」
グラスを掲げた東雲に合わせ、希実も慌ててワイングラスを持ち上げた。
赤い液体がゆらりと波打つ。
飲み慣れないワインの美味しさはまだよく分からないものの、彼とタイミングを合わせて一口飲み下した。
「ひとまず婚約をしましょう。僕としては今すぐ籍を入れたいところですが、色々準備があります。それに正式に結婚すれば、希実さんには引っ越してもらわなくてはなりません。そちらも心の準備期間が必要ですよね」
「……っ」
危うくワインを噴き出しそうになったのは、『引っ越し』を求められた以上に名前を呼ばれた驚愕のせいだった。
一気に酒精が駆け抜けて、顔が真っ赤に染まる。
大人になってから家族以外の男性に、生まれて初めて名前を呼ばれた。それも不意打ちに。
狼狽する希実を眺めた東雲がぼそりと「ハムスターみたいで本当に可愛いな……」と呟いたのも聞こえないくらい、すっかり動転してしまった。
「は、はい」
グラスを掲げた東雲に合わせ、希実も慌ててワイングラスを持ち上げた。
赤い液体がゆらりと波打つ。
飲み慣れないワインの美味しさはまだよく分からないものの、彼とタイミングを合わせて一口飲み下した。
「ひとまず婚約をしましょう。僕としては今すぐ籍を入れたいところですが、色々準備があります。それに正式に結婚すれば、希実さんには引っ越してもらわなくてはなりません。そちらも心の準備期間が必要ですよね」
「……っ」
危うくワインを噴き出しそうになったのは、『引っ越し』を求められた以上に名前を呼ばれた驚愕のせいだった。
一気に酒精が駆け抜けて、顔が真っ赤に染まる。
大人になってから家族以外の男性に、生まれて初めて名前を呼ばれた。それも不意打ちに。
狼狽する希実を眺めた東雲がぼそりと「ハムスターみたいで本当に可愛いな……」と呟いたのも聞こえないくらい、すっかり動転してしまった。