契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 実際、社内ではあわよくば東雲とお近づきになりたいと狙っている者が少なくなかった。
 たとえ恋人にはなれなくても、セフレや一夜の思い出でもいいと話す声があるとかないとか。
 希実には想像もできない複雑怪奇な世界である。

 ――怖い……極力関わりたくないって改めて思うわ……

 それでも大きな騒ぎにならずに済んでいたのは、飯尾花蓮が恋人であると大半の人間が信じているためであった。

 ――でも、違ったってことだよね……? 現社長と常務は若い頃からの盟友らしいし、その子供同士なら、とてもお似合いだと思っていたのに。――これ、私が聞いていい話じゃなさそう……

 トラブルの予感がする。
 特に不慣れな恋愛事には、首を突っ込むべきではない。そう判断し、希実がますます小さくなっていると。

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