契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ひどい侮辱をぶつけられ、頭が真っ白になった。
 直球の罵倒は胸を抉る。
 こんな悪口は聞き流せばいいのに、涙腺が情けなく緩んでしまった。

「あんたみたいなの、学生時代にも沢山いたわ。勉強しか取り柄がない、暗くているのかいないのか分からないタイプ。そういうのに限って、あざとく男の同情を引こうとするのよ。佐藤さんもか弱いアピールで東雲さんを誘惑したの?」
「わ、私が?」

 とんでもない発想の飛躍に愕然とした。
 こちらから彼に接近したことなんて、一度もない。
 今だってもし時間を巻き戻せるなら、全力で過去をやり直したいくらいだ。それこそあの日あの時間、地下倉庫になんていかなかった。
 存外花蓮は想像力が逞しいのか。
 驚きで固まった希実を睨み付けると、鼻息荒く長い髪を振り払った。

「なるほど……そういうことなのね。合点がいったわ」

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