契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――不味いわ……東雲さんに報告するにしても、飯尾さんの暴走を止められる予感がしない……!

「ふん、いい気になっていられるのも今のうちよ。化けの皮を剥いでやるから、待っていなさい」

 敵意の籠った視線を向けられ希実が委縮している間に、彼女は意気揚々と倉庫を出ていった。
 扉が重々しく閉じられる。
 残された希実は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


「……ということがあって、飯尾さんが何かしないか不安です……」

 萎れた声はごく小さい。
 希実は打ち合わせと称して、東雲を呼び出した。
 緊急連絡用に交換したアドレスにメッセージを送るのは緊張したが、そんなことは言っていられない。
 同じ社内にいても多忙な彼とはなかなか連絡が取れず、結局返信があったのは就業間際。
 二人は駐車場に停められた東雲の車の中で落ち合うことになった。

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