塩系男子のステルス溺愛 ~義兄の愛はわかりにくい

出会い

 ──どうかお母さんの悪い病気がもう出ませんように。


 祈るような気持ちで、ひなたは見知らぬ街のこれから暮らす家へと向かった。
 悪い病気とは、母親の過度の恋愛体質である。依存症といってもいい。

 ひなたの母かなえは、確か今年で37歳のはずだが、見た目に生活感やら疲れが出ない稀有なタイプで、そもそも子持ちにすら見えない。
 色白の肌に色素の薄い柔らかな髪はふわふわして、どこか少女らしさみたいなものが残っている。色気むんむんというタイプではないのだが、かつての恋人曰く「男の純情をかきたてる」女性なんだとか。

 なんだか妙に納得してしまうが、過度に恋愛体質の母親をもつと、苦労するのは娘のひなただった。恋人ができるたびに全てを捧げる母親は、いつも本気で結婚をゴールだとバツ3になった今でも思っている。
 再婚やら同棲するたびに引っ越し、西へ東へ。
 ひなたの転校は小学校で3回、中学校で二回目となる。
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