塩系男子のステルス溺愛 ~義兄の愛はわかりにくい
彼氏に夢中で、ひなたには冷たい、というようなことはない。
母は優しかった。いつも自分の恋愛相手は素晴らしく、ひなたのよき父になると信じて疑わない。
若くてきれいというだけではなく、昔から男心をそそる何か見えざる引力をもっているようだ。
その度に住居や父親が代わり、不安定な生活をしてきたけれど、母はひなたにはいつでも優しかった。ひなたにはいつも微笑みを絶やさず、家事も仕事も頑張っている。
けれどひとたび恋に落ちると、もはやその衝動は誰にも止められず、自分が婚姻中でも相手が既婚者でも愛だけのために仕事も家も捨て──ひなただけは捨てなかった──新しい生活を始めようとする。
母に連れられてやってきたのは、白くて立派な一戸建てだった。豪邸と言ってもよい。広い庭の中に上品だけど一目見てお金がかかってそうな家があった。
二人を出迎えたのは、昔ハンサムだったんだろうなという雰囲気の優しそうなおじさんと大きなゴールデンリトリバー。