塩系男子のステルス溺愛 ~義兄の愛はわかりにくい
「どこに住んでる」
「K駅です」
「……あとで連絡しろ」
そう言ってポケットに入ってたレシートに店員が持っていたボールペンを借りて、さらさらと電話番号を書いてひなたに渡した。
そんな様子をつまらなそうに見ている美女がいる。「なにこんなダサい子に電話番号とか渡してんの」という顔をしている。心の声が駄々洩れだ。いや、被害妄想かもしれないけれど。
「さっきの人、知り合い?」
「あー、うん。昔ちょっと」
一言で言うには、複雑は話だった。というか、ひなたにとって、天海家で暮らした日々は、よい思い出ではあるが、別れが辛かった分、思い出すと複雑な想いが入り混じってしまうから、頭の中に「そっとしておく記憶」として置いてある。
「蕁麻疹は落ち着いたの?」
「うん」