前世恋人だった副社長が、甘すぎる
私は、私を庇うように前にいる怜士さんの背中を見つめていた。
この背中が、こんなにも頼もしいと思ったことはない。
そして、自分のプライドがズタボロになっても私の味方をしてくれることに、胸を打たれた。
ただ……怜士さんは、やっぱり私にクリスチーヌを重ねているのだという確信に至る。
川原さんは、
「悪かったよ、ごめん」
なんて謝ってくれたけど、私はもう関わりたいと思わなかった。
元お嬢様だけに、このような差別はよく理解していた。
マルクとクリスチーヌが幸せになれなかったように、怜士さんと私も幸せになれないのかもしれない。
富豪と平民の恋愛なんて、ただの夢物語なのかもしれない。
それから……悶々とした気持ちを抑えて、何事もなかったかのように会食をした。
ラグジュアリーホテルのフレンチなだけあって、料理は頬がとろけるほど美味しかった。
私は怜士さんの隣で食事をし、話しかけられれば笑顔で受け答えし、前世のことを思い出していた。
前世でもよく、こういった社交の場に行っていた。前世の父親が、何としてもマルクと私を引き離したかったから。
だけど私は、マルク以外のいかなる男性にも堕ちなかったのだ。