前世恋人だった副社長が、甘すぎる
川原さんは驚いた様子で
「知っているんですか?」
なんて聞く。
少なくとも、音楽に関しては川原さんよりは知識があるだろう。
こんな時、前世お嬢様で良かったと心から思った。
そして、この会話からさりげなくフェードアウトしようと思った時、川原さんが再び口を開いたのだ。
「怜士が秘書を捕まえたと言ってびっくりしましたが、菊川さんみたいな方で良かったです」
「ありがとうございます」
社交辞令だと思い、作り笑いで対処する。
だけど川原さんはまだ、話を辞めようとはしない。
「僕は怜士とは中学時代からの友達ですが、今日みたいな怜士を初めて見ました」
思わぬ怜士さんの話に、私は聞き入ってしまった。