前世恋人だった副社長が、甘すぎる


「僕は怜士が二十歳になった時に起こった事実を、怜士のご両親から聞いたことがあります。

怜士が実家に帰った時、彼は毎晩涙を流しうなされていたと。

そして何度もクリスチーヌと叫ぶということを。

今話題の、『クリスチーヌとマルクの話』ではないのですがね」


川原さんはそう言って笑うが、私は笑えなかった。

怜士さんを思って、胸が痛くなった。


「ご両親は怜士が悪霊に取り憑かれていると思って、有名な霊媒師を何人も呼びました。

だけど、誰も怜士さんを元に戻すことは出来なかったのです」



きっと、怜士さんは二十歳になって、前世の記憶を取り戻したのだろう。

よくよく考えれば、私だって同じだ。というのも、クリスチーヌがマルクを庇って死んだのも、二十歳の時だったから。

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