前世恋人だった副社長が、甘すぎる
こうして、会は無事終わり、怜士さんと私は並んでゲストを見送った。
怜士さんは始終真っ赤な顔をして、時折泣きそうに口元を歪めた。
きっと、バイオリンを弾く私にクリスチーヌの姿を重ねていたのだろう。
そして不覚にも、今日の私の振る舞いはクリスチーヌそのものだっただろう。
仕方がない、あの仰々しい会食の場で、怜士さんに恥をかかせるわけにはいかなかったのだから。
だけど会も終わり、私は緊張が解けたようにいつもの穂花に戻る。
「怜士さん、社交の場は酷く疲れますね。
私たちも早く帰って寝て、明日に備えましょう」
「そうだな」
静かに返事をする怜士さん。
そしてそれ以上何も話さず、ただ紅い顔で私の背中に手を添えて歩いた。