前世恋人だった副社長が、甘すぎる
広い会議室には、たくさんの幹部が集まっていた。
中央には社長が座り、その隣が怜士さんの席だ。
そして私は、怜士さんの近くの席に腰を下ろす。
この時、私は初めて社長を見た。もちろん、写真などでは何度か見たことがあったのだが。
クールな怜士さんとは違い、社長は温厚で穏やかそうな初老の男性だった。
髪には白髪が混じり、優しそうな皺が寄っているが、若い時にはかなりの美形だったのだろう。
そして、どことなく怜士さんの面影があった。
こんな社長や怜士さんに、幹部は頭を下げにくる。
冷徹な怜士さんのことだから、その対応すら嫌がるだろうと思ったが……今日の怜士さんは珍しく部下に頭を下げ、にっこりではないが微かに微笑んでいるではないか。
氷の副社長も、社長の前では氷のままではいられないということなのか。