前世恋人だった副社長が、甘すぎる
アルコールも手伝ってか、泉の無防備さは増していた。
挙げ句の果てに、
「怜士さん!穂花、急に副社長の秘書になったんだよ。
ここだけの話、ウチの副社長超性格悪くてさぁ、穂花が虐められてないか心配だよ」
なんて言い始める、愚かな泉。
私は必死に止めようとするが、怜士さんを完全に部外者だと思っている。
私は怖くて怜士さんを見ることが出来なかったが、怜士さんは意外と何も思っていないのだろうか。
「そいつ、あり得ないな。
俺がしばいてやろうか」
なんて、みんなと楽しそうに笑っていた。
正直意外だった。冷血漢でお金持ちの怜士さんは、この庶民の集まりに浮くだろうと思っていた。
だが、私よりも自然に馴染んでいるのだ。
これこそ、前世庶民だったからかもしれない、なんて思わずにはいられない。
おまけに、カラオケこそ歌わなかったが、酒が入ってハイテンションの周りと一緒に、手を叩いたり合いの手まで入れたりしていて。あぁ、意外と普通の人なんだと錯覚してしまう。
だけど、身体の一部が触れるたびドキドキしてしまうし、怜士さんがいると思うだけで落ち着かなかった。
やっぱり、怜士さんが好きだ。
知らない一面を見るたびに、どんどん好きになっていく……