前世恋人だった副社長が、甘すぎる
そのまま、怜士さんと出社した。私が先に出社するのが正しいのだろうが、怜士さんが酷く怯えた顔をしていたから。
だから他愛もない話をしながら会社へ向かったのだが、やはりどこか元気のない怜士さんに不安になってしまう。
そしてオフィスビルの最上階へ上がった時、その不安は現実のものとなったのだ。
エレベーターの扉が開いた瞬間、目の前に普段ほとんど見ることのない社長が立っていた。
社長の隣には、小さくて可愛らしい、華やかなワンピースを着た女性が立っている。
「おはようございます」
頭を下げながら、その横を素通りしようとする怜士さん。
私も挨拶をして、怜士さんに続こうとしたのだが……
「怜士」
社長が怜士さんを呼び止める。
振り返る怜士さんは、本当に何の表情もない冷たい顔をしていた。
だが、そこはさすがの親子だ。社長は相変わらずにこにこして告げたのだ。