前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「小川ホテルグループ社長の令嬢、小川小百合さんだ」
優雅に頭を下げる小百合さんに対して、怜士さんは礼すらせず冷たい瞳で見つめる。
そのまま社長は告げたのだ。
「将来の怜士の妻として、しばらく秘書の仕事は小百合さんに任せる。
菊川さん、短い間でしたが、怜士の世話をありがとうございました。
今日からは以前の勤務先、以前の家へ戻ってください」
「え……」
ちょっと待って。いや、待たなくても分かる。
この人は怜士さんの婚約者で、私はもう『用無し』になったのだと。
あまりに咄嗟の出来事により、何も言葉を話せない私は、ただ呆然と前の光景を見る。