前世恋人だった副社長が、甘すぎる


やがて、不満そうに怜士さんが告げた。


「だから、俺は見合いは受け付けないと言っただろ」

「受け付ないと言われても、もう決定事項だ」


社長は笑っているのに、その言葉が酷く怖い。いや、目は笑っていないのに気付いてしまった。

彼は続ける。


「今後当ホテルグループは、小川ホテルグループを買収することになるだろう。

そのためにも、怜士は小百合嬢と結婚するのが一番だ」

「だから……俺はモノじゃない」


怜士さんは吐き出したが、酷く顔を赤らめて怒っているのがよく分かる。


「……なあ、穂花」


そのまま、すがるように目で私を見る。


「俺は金とか出世とかどうでもいい。こんな家、すぐにでも捨ててやる。

だから俺と……」


二人で逃げよう、彼はそう告げた。

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