前世恋人だった副社長が、甘すぎる



ホールを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

そして川原さんに促され、ホール近くのすごく高そうなフランス料理店でディナーをする。

どうやらミシュランにも載っているような有名店らしい。味も頬が落ちるほど美味しかった。

料理を食べる私を、川原さんは嬉しそうに見ていた。

そんな瞳を避けたくて、私は必死で話題を探す。



「今日のコンサート、とても感動しました」


私の言葉に、川原さんは笑う。

この人は、どうしてこうも楽しそうに笑うのだろうか。


「二週間前の、あの会食を思い出しました。

川原さんもピアノ、すごくお上手でしたよね」


私の言葉に、ありがとうと笑う川原さん。


「僕もピアノは幼稚舎の頃からしているからね。

音楽教室の友達と、よくコンサートごっこなんてしていたよ」


なんて高貴な遊びだろう。やっぱり、御曹司は世界が違う。

だけど川原さんは、複雑な顔で続けた。


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