前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「高校時代も、学園祭でピアノコンテストがあったんだよ。
僕はもちろん一番を取れると思ったけどね……怜士に負けた」
「えっ!?怜士さんってピアノ弾けるんですか!?」
その事実に驚くばかりだ。
この前の会食の時だって、弾けるそぶり一つ見せなかった。
「怜士、子供の頃からピアノは熱心にやってたみたいでね。実は結構な腕なんだよ」
怜士さんにマルクの記憶が甦ったのは、二十歳の時だ。
だからマルクの記憶によってピアノを始めた訳ではないと思うが……また胸がずきんとする。
怜士さんは自分だってピアノが弾けるのに、川原さんと演奏していた私をどんな気持ちで見ていたのだろう。
あの時の泣きそうな怜士さんが、頭から消えない。