前世恋人だった副社長が、甘すぎる
俺がそう追い出すから、田川は小川を連れて出て行ってしまった。
しーんとする部屋の中、ようやくひと息つく俺。
小川が淹れた紅茶なんてもちろん手を付けるつもりもなく、ストックしていたペットボトルの緑茶を飲んだ。
そしてそのまま電話に手を伸ばし、何度もかけたその番号を押したのだ。
数度着信音が鳴り、受話器越しに女性の声が聞こえる。
その女性に、俺は聞いていた。
「泉さん。穂花の様子はどう?」
すると彼女は、少し言いにくそうに告げたのだ。
「昨日、赤いオープンカーに乗ったイケメンが、穂花を迎えに来ましたよ。
穂花は興味なさそうだったけど、そのイケメン穂花に気がありそうだったなぁ……」
「マジか……」
赤いオープンカーのイケメン。間違いなく傑だろう。
傑は庶民に興味がないなんて言っていたが、あの会食の日から穂花が気になって仕方がない。