前世恋人だった副社長が、甘すぎる
ゆっくり辞令を封筒から出す。
隣で先輩が泣きそうな悲鳴を上げた。
『菊川 穂花様』
皺のない白い紙に、こう書いてあった。
『三月十二日を以て 副社長室秘書を任ずる』
「……え!?」
ちょっと待って。
私、目がおかしいのかな。それとも、いよいよ頭が狂って文字さえ読めなくなったのか。
だが、何度目を擦ってもまばたきをしても、その文字は変わらない。
私の代わりに隣にいた先輩が、
「副社長室秘書!!?」
素っ頓狂な声を上げる。
その言葉を聞き、自分の頭が狂っていないと安堵する。
だけど……副社長室秘書!?
なんで?
どうしてそんなことになってしまったの!?