前世恋人だった副社長が、甘すぎる
数時間後……
動揺しつつもなんとかフロント業務をこなす私の前に、ホテルを去る副社長が現れた。
私のことなんて放っておけばいいのに、
「菊川さん。辞令、受け取っていただけましたか」
また、優しい笑みのいい人演技で私の前に立つ副社長。
私は挑むように彼を見上げ、
「明日から、よろしくお願いします」
頭を下げる。
こんな私をさっきの甘くて優しい瞳で見つめる。
ドキッとする私に……副社長はそっと手を伸ばす。
その指先が髪に触れた瞬間、身体にビリビリッと電流が流れた。
慌てて上げた私の顔は、きっと夕陽よりも真っ赤だろう。