前世恋人だった副社長が、甘すぎる



そして……



私たちは着替えを済ませ、ロビーにいた。

私の前には、ソファーに座る社長夫妻。

社長を見た時に、あの光景が脳裏をよぎってどきっとした。

彼はまた、私を冷めた目で見るのかもしれない。だけど怜士さんがぎゅっと手を握ってくれるから、少しだけ安心した。

そして私たちを見つけるなり二人は立ち上がり、

「穂花さん。先日は穂花さんを大変傷つけてしまい、申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げる。

社長なんかに頭を下げられて混乱する私は、

「と、とんでもないです!!」

大慌てだ。


「わっ、私みたいな者が怜士さんと結婚したいだなんて、たっ、大変厚かましいことだと分かっています!」

なんて言いながらも、諦めることなんて出来ないとはっきり分かる。

そして今の私の言葉に、社長はまた同意するかもしれないと不安になる。



社長を前に怯えてしまったが、ここは譲れないと強く言うべきだっただろう。

怜士さんは何も言わないが、明らかにイラついているようで、怒りのオーラをひしひしと感じる。

情けない私に怒っているのか、はたまた両親に怒っているのか……




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