前世恋人だった副社長が、甘すぎる
そんな怜士さんをちらりと見て話し始めたのは、彼の母親だった。
長い髪を優雅に巻いた彼女も、きっとどこかの令嬢だったに違いない。あまりの上品さにくらっとする。
だけど彼女は私を見下すこともなく、まっすぐに告げるのだ。
「穂花さん、怜士は二十歳を過ぎてから、酷く冷たく無表情になりました。
私たち親に対してはもちろん、これから取りまとめていくであろう、社員たちにも。
もちろん現場からの評判は悪く、怜士に将来社長が務まるのか不安に思っていました。
そして、怜士は人に興味がないのだろうか、どんな縁談も即座に拒否するのですが、無理矢理女性と会わせても、最終的には女性が怯えて逃げてしまうのです。
だから私たちは、怜士が悪霊に取り憑かれたのではないかと疑っていました」
私の隣で怜士さんが、
「おい」
と威嚇するように低く唸る。きっと、そういうのがいけないのだろう。