前世恋人だった副社長が、甘すぎる

そんな怜士さんをちらりと見て話し始めたのは、彼の母親だった。

長い髪を優雅に巻いた彼女も、きっとどこかの令嬢だったに違いない。あまりの上品さにくらっとする。 

だけど彼女は私を見下すこともなく、まっすぐに告げるのだ。



「穂花さん、怜士は二十歳を過ぎてから、酷く冷たく無表情になりました。

私たち親に対してはもちろん、これから取りまとめていくであろう、社員たちにも。

もちろん現場からの評判は悪く、怜士に将来社長が務まるのか不安に思っていました。

そして、怜士は人に興味がないのだろうか、どんな縁談も即座に拒否するのですが、無理矢理女性と会わせても、最終的には女性が怯えて逃げてしまうのです。

だから私たちは、怜士が悪霊に取り憑かれたのではないかと疑っていました」


私の隣で怜士さんが、

「おい」

と威嚇するように低く唸る。きっと、そういうのがいけないのだろう。


< 249 / 258 >

この作品をシェア

pagetop