前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「はっ、はい!!」
子供のように動揺する私は、落ち着いている副社長を前に酷くみっともない。
こんな私に近付き、
「来てくれて嬉しいです」
副社長は目を細め、心底嬉しそうに笑う。
「今日、貴女が来るのをずっと待っていました」
副社長はそう告げ、私の手をそっと握る。
副社長が触れた瞬間、ビリビリと手が痺れた。
忘れていた甘くて熱い感覚が、どっと押し寄せてくる。
手が触れただけなのに副社長に酔っている私に、彼は聞いた。
「私のことを、覚えていますか?」
……え!?
思わず見上げてしまった。
副社長は記憶の中のマルクと全然違う。
だけど、その優しい瞳は同じだ。
でも、その話はきっと私の妄想であり、副社長にばかな女だと思われるに違いない。
考えた挙句、私は答え、深々と頭を下げた。
「副社長のことは、もちろん存じ上げています。
私なんかに副社長の秘書が努まるか不安ですが、どうぞよろしくお願いいたします」