前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「そして穂花さんは……ピアノがお上手なのはもちろん、お客様と笑顔で談笑されていたり、外国語を話す男性とも当然のように話されていて、なんて素敵なかたかと思いました。
あの笑顔で気配り上手の穂花さんがいるから、怜士も少し柔らかくなったのだろうと」
「とんでもないです……」
まさか、私のことを褒められるなんて思ってもいなかった。
私なんてただの庶民なのに、怜士さんの母親は、こんなにも私を見てくださっていたなんて。
母親だけでない、父親である社長も続ける。
「今日、川原電機の社長から連絡をもらったよ。
怜士が穂花さんと結婚しないなら、川原社長の息子さんと穂花さんとを結婚させたいと。
川原社長が言うには、穂花さんは四ヶ国語を話せ、食事のマナーも完璧、ピアノだけでなくバイオリンにも長けていると。
社長夫人として、川原家を取り仕切るにはちょうどいい人材だと」
……え?川原さんが?
だけど、ふと思った。
川原さんは私が怜士さんしか見えていないことを知っているから、怜士さんへの助け舟を出したのではないだろうか。
川原さんは、本当に優しくて聡明な方だ。
きっと、川原さんと結婚する女性は幸せになるだろう。
だけど私には、怜士さんしかいない。