前世恋人だった副社長が、甘すぎる
怜士さんが冷たくてキツいだなんて、思ったこともなかった。
私は怜士さんのいいところをたくさん知っていて、そんな怜士さんにただ惚れている。
怜士さんと私なんて釣り合わないと悩んだこともあったが、私といることで怜士さんが穏やかになり、こんなに感謝され認められるなんて……そして何より、怜士さんと結婚出来ることが、ただただ嬉しい。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
深く深く頭を下げ、溢れ出そうになる涙を必死にこらえた。
そんな私の隣で、一緒に頭を下げてくれる怜士さん。
怜士さんは父親に反対されようと、いつでも私の味方だった。そして、何とかして私を取り戻そうと足掻いてくれた。
そのやり方は自慢出来るものではないが、自分を悪魔にしてまで私を離さなかった怜士さんにまた胸を打たれる。
「穂花さん、今度うちにも来て、ピアノを弾いてくださいね」
嬉しそうに告げる母親に、はいと満面の笑みで返事をした。
怜士さんのご両親にピアノを聴かせるとなると、怜士さんみたいに必死で練習しなきゃいけないなと内心思いながら。